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こんにちは、アーティストのWasaViです。

突然ですがクイズです。

人類誕生から今日まで、何万年の時を経ても変わっていないものは何でしょうか。

目まぐるしく変わる人類史の中で、ずっと変わらないもの。

それは「音」です。(※1)

何万年も前から風の音は我々の側にありましたし、

手を叩く音も、個人差はあれど昔から同じです。

(※1 科学的に言えば、音とは周波数と持続時間と振幅が絶えず変化することで生まれる現象なので、同音/不変な音はないということにはなりますが、昔と今の風の音などは「同質」の音ではあるでしょう)

人間は音を利用して様々な文化芸術を育んできました。

では人間が音を使い始めたのは、いつからで、のような背景があるのか。

そして楽器というのは、どのようにして生まれたのか。

今日は「音と楽器」について紹介します。


音ってなに?


科学的に言うと、音とは空気が振動することで発生する現象です。

つまり「空気が振動すると音が鳴る」のですが、人間にとって「空気の振動=音」ではありません。

なぜなら人間にとって音には2種類、「①雑音」と「②音として認識する音」があるからです。

雑音とは、例えば風の音。

街中を歩いている時、風の音なんて特に気にしないし

音が鳴っていたかなんて覚えていないでしょう。

対して、街を歩いていて突然後ろで手拍子が聞こえてきたら

きっと少しばかりは意識を向けますし、記憶に残るでしょう。

なぜ風の音は記憶に残らないのに、手拍子は記憶に残るのか。

それは音を「意識」したからです。

我々は常に色々な音に囲まれて生きています。

だから取捨選択しないと脳がパンクしてしまう。

つまり空気の振動に加えて、意識して初めて音は「音」として脳に届くのです。

これから述べる「音」と言うのは「音として認識する音」を指すこととします。


音を意識するって何?


人間は生活を通して様々な音を意識し始めます。

そもそも「音を意識する」とは何でしょうか。

それは音を記憶するということ。

では音を記憶するために必要なことは何か。

自分の精神/肉体に影響を与える音が繰り返されることが必要です。

特定の状況/条件下において「この音がなる」ということが記憶されれば、それは「特別な音」として意識されることになります。

このようなフローを通して人間は音を意識することになります。


認識した音を「再現」する


そして認識した音を再現したいと思うようになります。

そこで登場するのが楽器、意図的に音を「再現」する道具です。

そもそも人間が音を再現したいと思った発端は何でしょうか。

一説によると、緊張した時に、喉や体を使った音を使って緊張から解き放たれたいという衝動だとされています。

緊張がほぐれるという事象と、その規則正しい動きや音との関係性が学習されれば

その次のステップでは意識的に緊張をほぐすためにその「音」を作り出します。

そして更にその音を使うことで、例えば戦の前などに「緊張せよ」という場面を呼び起こすことが可能になります。

この瞬間に人間は「楽器」に変化し、更に他の楽器の発端もここに見出すことができるとされています。


道具を使った音の発見


人間と動物の違いは「道具をつくり、それを使う」こと。

そして道具を使い始めるということは、新たな音と出会うということ。

体から出る音だけではなく、道具から出る音を意識するようになります。

今まで音を認識する流れを見ましたが、ここでは音をどのように再現してきたか

つまり「楽器の発生」を見ていきます。

日用品から楽器へ

日常生活の中で最も耳にするのは恐らく食器が触れ合う音でしょう。

そこからも人間は「音」を再現していきます。

水が入った茶碗を箸で叩いて演奏されるインドのジャルタランなどがその例です。

Jalatharangam – John Roach

トルコなどでは木製のスプーンを打ち鳴らして踊るカシークダンスというのがあります。

Folk dancers from the Bolu province, performing a local dance called 'Yeşil ördek' (The Green Duck), which is both a song and a 'kaşık oyunu… | Ördek, Kültür, Kadın

道具から楽器へ

穀物をすり潰す臼杵からも楽器は誕生しました。

台湾の少数民族には長さや太さの異なった杵を石の上に突き下ろす楽器があります。

脱穀したり、穀物を粉にする時に発生する音を再現する楽器でしょうか。

東南アジアや西アフリカなど、臼を使う地域ではよくこの形態の楽器が見られます。

日本でも古くから道具の楽器はあり、富山県越中五箇山では農具の鍬の先っぽを紐で吊るして木槌で打つという楽器があります。

こきりこ節と言う五穀豊穣を祈る踊りで使用される楽器です。

この楽器の多くは鍬金の長さが非常に短いのですが、おそらく使い古した鍬の先を叩き始めたことが発端だからでしょう。

自然界の音から楽器へ

自然界の音を意図的に再現しようと作られた楽器もあります。

東南アジア以外のアジア地域を除く世界のほとんどに分布しているのがブルローラーという楽器です。

サーフボードの形をした薄い板に長い紐を結びつけたこの楽器は、振り回すことで唸るような音を出します。

ブルローラーは先祖の声や精霊の声に見立てられ畏れる対象として使用されたり、嵐や雷の音と見立てられ雨乞いにも使われたりしています。

Australian Bullroarer - Timothy S. Y. Lam Museum of Anthropology

生きるために必要な音から楽器へ

生きていくにあたって音が必要になる場面も多々あります。

村の仲間に危険を知らせたり、仲間同士の合図などです。

これは大きな音を出すであったり、指笛などがあります。

 

呪具から楽器へ

宗教や信仰儀礼において音、音楽は必要不可欠です。

その中でもくり抜かれた木を叩く楽器は各地に存在します。

くり抜かれた木を吊るし叩くスリッドドラムという楽器は、地球上の北緯20度の下のほぼ全域にあるほど広範囲に存在しています。

 

日本でも木魚はくり抜かれた木の楽器です。

また楽弓にも元は呪術的な要因から始まったものがあります。

フランス南西部の洞窟には楽弓を持った半身半獣のシャーマンのような人物が、紀元前1500年前に描かれました。

Trois Frères | THINKING ON MUSIC

約4万年前にワシの翼の骨とマンモスの牙でできたフルートがドイツ南部の洞窟で発見されています。

中国でも病を払うために空弓を鳴らすという儀礼がありますが、矢が弓から離れる時の音が狩猟の成功の祈りに使われたためでしょうか。

日本にも破魔矢というのがあったり、弓というのは呪術的に使われたものだと推察されます。

・学問・研究から楽器へ

今や全世界を支配している「西洋音楽」

下のドから上のドまでには12音ありますが

それを作り出した楽器こそ、古代ギリシャのモノコードです。

Monochord | Whipple Museum

長方形の箱の上に弦が一本張られている楽器で、この楽器によって音の高さは弦の長さと反比例するということが分かりました。

オクターブ音程の弦の長さの比率は1:1、5度音程は2:3、4度音程は3:4という比率に基づき、1オクターブに12音を持つ「ピタゴラス音程」が作られました。

この楽器は後に教会音楽で基準音を示す楽器としても使用されたりしています。

 

そして中国でも似たようなことが行われており、

律管という長さの異なる竹筒の笛を使用して、長さと音程の比率の研究がなされていました。

律管- 抖音百科

ここでも最終的に12律というオクターブ形態が開発されています。


人はなぜ音楽を求めたのか


ここまで音の認識、楽器の発生について見てきました。

ついにここから「音楽」が誕生します。

楽器や音楽の発展の歴史は長くなるのでここでは割愛しますが、

最後に「なぜ人は音楽を求めたのか」を記載します。

もちろん「自分を解放する」「楽しむ」というのは大前提あると思いますが、音楽がここまで発展した理由の一つに

自分の集団のアイデンティティを求めたから

というのもあると思います。

校歌や国歌、野球の応援歌などを思い出して見てください。

これらは集団における帰属意識やコミュニケーション手段として生まれました。

教会で行われる「讃美歌」もこの例にもれないでしょう。

制圧した領地を収める手段として使用された側面もあるキリスト教では、異民族をまとめ上げる方法として「讃美歌」を使用します。

厳格に音程などをルール化し、正しく伝えるために記譜法も改良して、全員にわかりやすく、全員に同じ意識を持ちやすいように発展してきました。

(これこそ西洋音楽が全世界の基準となった要因の一つ)

キリスト教のみならず仏教のお経・イスラム教のコーランなども、同じ側面を持っていたはずです。

音楽は自分たちのアイデンティティをより強固にするために、必要不可欠なものだったんだと思います。

ただもちろん当てはまらない民族もいて、

スリランカのヴェッタ族の一部は集団として音楽を共有せず、個々で勝手に歌い踊る音楽を発展させていきました。

各自が疲れ果てたらおしまいという仕組みらしいです。


最後に


人間は音を利用し、様々な現象を再現してきました。

楽器の発端・発展において

・音を意識する → 意識した音が記録される → 音を再現する

という流れを紹介しましたが、最後の矢印があります。

「→ 新しい音を作る」です。

 

例えばピアノは元々ピアノとしてこの世に誕生したのではありません。

建築様式の変化や生活様式の変化など、様々な要因を受けて変化し、現在の形になりました。

この4つの流れから現在の楽器は成り立っているのだと思います。

この話はまた近日中に…

人間は音と遊び、音を使って色々なことができる生き物です。

周りに溢れる日常の音に耳を傾けて、何万年も前の人も聞いていた変わらない悠久の音を感じてみるのもよし

楽器の音を聞いて人間の音に対する努力を感じるもよし。

ぜひ今日は周りに溢れる音に意識を向けてみてください。

新しい発見があるかもしれません。

また次回をお楽しみに…

次回!「音楽に国境はないが、国境に音楽はある」

WasaVi 

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